ネジバナ(捩花)は、芝生や歩道の脇でらせん状の花を咲かせる野草です。
個性的な姿をしており、春から夏にかけて開花します。
本記事では、ネジバナの特徴や花言葉から似た花について解説いたします。
記事後半では、ネジバナの育て方も紹介していますので、参考にしてみてください。
ネジバナとは?
ネジバナとはどんな野草なのか?
ネジバナの基本情報について解説いたします。
・ネジバナの基本情報
・ネジバナの名前の由来
・ネジバナの花言葉
ネジバナの基本情報
学名 | Spiranthes sinensis var. amoena |
英名 | Chinese spiranthes |
和名 | ネジバナ(捩花) |
別名・流通名 | モジズリ(綟摺) |
科名 | ラン科 |
属名 | ネジバナ属 |
原産地 | 日本、千島、サハリン、ロシア以東のユーラシア大陸亜寒帯~暖温帯 |
日本での主な生息地 | 北海道~沖縄 |
ネジバナの名前の由来
ネジバナという名前は、漢字で「捩花」と表記します。
咲いた花穂が螺旋状に捩じれ、その個性的な姿から「捩じれた花序」という意味を込めて付けられました。
なお、学名の「Spiranthes」はギリシア語で”螺旋”と”花”を意味する言葉が語源となっており、花の姿にちなんで付けられたことが分かります。
ネジバナの花言葉
この花言葉は、万葉集の歌にちなんで付けられたと言われています。
ネジバナは万葉集で詠まれた花
万葉集の「芝付の 御宇良崎なる 根都古草 逢ひ見ずあらば 吾恋ひめやも」という歌に出てくる根都古草はネジバナを表すと言われており、これが花言葉の由来になっています。
この歌は「あなたに出会うことがなければ、こんなに恋で苦しむことはなかった」という意味があり、茎にすがるように巻きついた花序を自分の気持ちに重ねていると言われています。
ネジバナの特徴
ネジバナの特徴は以下の通りです。
花が咲く季節 | 4~8月 |
実のなる季節 | – |
生活型 | 多年草 |
生活様式 | 地生 |
草丈・樹高 | 100〜400mm |
葉の形 | 線形 |
花のつき方 | 穂状花序 |
花の色 | ピンク |
葉の色 | 緑 |
繁殖方法 | 種、株分け |
日照条件 | 日向 |
水分の必要性 | 必要 |
土の必要性 | 必要 |
ネジバナの自生地
ネジバナはロシアより東のユーラシア大陸亜寒帯~暖温帯、オセアニアなど広域にわたり分布しています。
日本国内においても、北海道〜沖縄までほぼ全国的に自生が確認されています。
ラン科にしては珍しく、公園の芝生や土手など人間の生活圏に近い領域で自生していますが、雑草と認識されて刈り取られてしまうこともあるようです。
ネジバナの花の特徴
ネジバナは100〜400mm程度にまで伸びた花茎に巻きつく形で、らせん状の花を付けます。
花の色は通常ピンク色で、直径5mmと小さいですが多数の花を横向きに咲かせます。
背萼片と側花弁で兜の形を作っており、唇弁は白く縁に細かい歯牙があります。
また、花茎やつぼみには細かな毛がたくさん付いている点も特徴です。
ネジバナの葉の特徴
ネジバナの葉における大きな特徴は、夏と冬で姿を変えるという性質です。
夏葉は細長く上に伸びており、中心部分から花茎が伸びて花が咲きます。
一方、冬葉は短く丸い形をしており、地面に密着して放射状に広がっています。
春〜夏の開花が終わると冬葉が生え、冬になると夏葉が枯れ、春になると夏葉が生えて冬葉が枯れる…というサイクルを繰り返しているため、地上部は年中枯れることはありません。
また、ネジバナの葉は根出葉と茎に付く鱗片葉の2種類があります。
ネジバナは食べることができる?
ネジバナは毒性を持たないため、食べても問題はありません。
ただし、かなり強い苦味があるため美味しく食べることは難しいでしょう。
硬さは茹でることで柔らかくなりますが、ネジバナの強烈な苦味を緩和する調理法は不明です。
ネジバナはできるだけ食べず、鑑賞用に留めておくことをおすすめします。
ネジバナと似た花

ネジバナは、「ナンゴクネジバナ」や「ミズヒキ」と外見がよく似ています。
それぞれの見分け方について、以下より解説いたします。
・ネジバナとナンゴクネジバナの違い
・ネジバナとミズヒキの違い
<比較表>
比較 | ネジバナ | ナンゴクネジバナ | ミズヒキ |
花 | ・ピンク色 ・細かい毛がある | ・基本的に淡いピンク色 ・白色の種もある ・無毛 ・花序がらせん状 | ・紅色 ・花序はひも状 |
葉 | ・長さ50~200mm、幅3~10mm ・広線形 | ・長さ50~200mm、幅3~10mm ・広線形 | ・長さ50~150mm、幅40mm~90mm ・楕円形 ・両面に毛がある |
日本国内の自生地 | 全国 | 伊豆諸島、南西諸島 | 全国の林縁、道端など |
季節 | 4~8月 | 3~5月 | 8~10月 |
ネジバナとナンゴクネジバナの違い

ネジバナと同じく、ラン科ネジバナ属に分類される花です。
様々な地域に分布するネジバナに対し、ナンゴクネジバナは伊豆諸島や南西諸島といった暖かい地域に自生しています。
外見はネジバナとほとんど同じですが、花茎やつぼみに毛が生えていません。
また、花は基本的に淡いピンク色ですが白い花を咲かせる種もあり、白い花のナンゴクネジバナは「シロバナナンゴクネジバナ」と呼ばれています。
ネジバナとミズヒキの違い

ミズヒキもネジバナと同様、直立した花茎に小さな花を付けます。
ただし花は紅色をしていること、花序がらせん状になっていないこと、葉の形が異なるから区別は難しくありません。
ネジバナが見れる場所・植物園
ネジバナの目撃情報や、生育情報が確認された場所は以下の通りです。
・戸隠森林植物園
・小石川植物園
・神代植物公園
・渋谷区ふれあい植物センター
・筑波実験植物園
など
ネジバナの目撃情報
SNS上に寄せられた、ハマボウフウの目撃情報をご紹介いたします。
ネジバナに関するFAQ
ネジバナについてよくある質問を集めてみました。
・白い花を咲かせるネジバナはありますか?
・ネジバナは右巻きと左巻きどちらですか?
・ネジバナの種の取り方はどうしたら良いですか?
白い花を咲かせるネジバナはありますか?
まれに白い花を咲かせるネジバナもあり、「シロバナネジバナ」と呼ばれています。
ネジバナは右巻きと左巻きどちらですか?
花序の螺旋の向きは、左右どちらも同じくらい存在すると言われています。
ネジバナの種の取り方はどうしたら良いですか?
ネジバナの種はとても細かいので、果実が黄色くなってきた時点で花茎ごと採取しましょう。
紙袋などに入れて保存すると、翌日に果実が弾けて種が出てきます。
ネジバナの育て方
・ネジバナのガーデニング情報
・ネジバナの育て方カレンダー
・ネジバナの栽培方法
ネジバナのガーデニング情報
全国的に分布しているネジバナは生命力が強く、管理も簡単そうなイメージがあるかと思います。
実際は乾燥や寒さ対策が必要なうえ、病害虫のリスクも潜んでいるため栽培が難しい花なのです。
自分で栽培に挑戦する場合は、ここで解説するネジバナの育て方を参考にしてみてください。
栽培難易度 | やや難しい |
株間 | – |
種まきの時期 | 7、8月 |
ネジバナの育て方カレンダー
時期 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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開花 | → | → | → | → | → | |||||||
植え付け、植え替え | → | → | ||||||||||
肥料(鉢植え) | → | → | → | |||||||||
肥料(庭植え) | → | → | → | |||||||||
種まき | → | → |
ネジバナの栽培方法
環境・土壌
ネジバナは年間を通して日当たりの良い場所を好みます。
半日陰でも育ちますが、間延びして見栄えが悪くなってしまうためできるだけ日向を選んで育てましょう。
ただし乾燥に弱いため、真夏の時期に限っては日陰や半日陰となる環境で育てると安心です。
土は市販の山野草用の土を使うか、一般的な草花用培養土に赤玉土を3割ほど足して使いましょう。
芽出し
ネジバナは、ラン科植物の根に付いている「ラン菌」がなければ発芽しません。
種から育てる場合、親株の株本やラン科植物と同じ鉢にまきましょう。
定植
定植は真夏や真冬を避け、春か秋の暖かい日に行いましょう。
定植したら、たっぷりと水を与えます。
肥料
肥料を与えると育ちすぎて見栄えを損なうため、基本的に必要ありません。
手入れ
ネジバナは乾燥が苦手なため、土が乾いた時点でしっかりと水やりをします。
また、3~5月になるとアブラムシが発生することがあるため見つけ次第駆除しましょう。
植替え
植え替えはできるだけ3月中に行い、できるだけ古い土を落とさないようにしましょう。
まとめ
ネジバナはその名の通り、花茎に巻きつくようにねじれた花序が特徴的な植物です。
ひとつひとつの花は小さいですが、よく見るとラン科特有の兜形をした可愛らしい外見をしています。
全国的に分布しているため雑草と思われがちですが、栽培の難易度は意外にも高いものです。
特に種から育てる場合は他の植物がいなければ失敗しやすいですが、自分の庭や鉢に開花するネジバナを見てみたいという方は是非栽培に挑戦してみてください。
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