山林などの湿った土地に自生するエンレイソウ(延齢草)は、数ある野草の中でも特に寿命が長いことで知られている山野草です。
本記事では、エンレイソウの花や葉の特徴から花言葉、似た種類の花との見分け方ついて詳しく解説いたします。
記事の後半では、エンレイソウの育て方も紹介していますので、最後までご覧ください。
エンレイソウとは?
エンレイソウとはどんな野草なのか?
エンレイソウの基本情報について解説いたします
・エンレイソウの基本情報
・エンレイソウの名前の由来
・エンレイソウの花言葉
エンレイソウの基本情報
学名 | Trillium apetalon |
英名 | – |
和名 | エンレイソウ(延齢草) |
別名・流通名 | タチアオイ |
科名 | シュロソウ科 |
属名 | エンレイソウ属 |
原産地 | 日本、南千島、サハリン |
日本での主な生息地 | 北海道~九州 |
エンレイソウの名前の由来
エンレイソウは、古くから根茎を胃腸薬や催吐剤として用いられていました。
胃腸などの症状に苦しむ人の治療にエンレイソウを用いたことで、命を取り留めたという逸話があることから「エンレイソウ(延齢草)」と名付けられたのです。
また、学名に含まれる「Trillium」は「tri(3つ)」と「lilium(ユリ)」を組み合わせた言葉で、萼片と花弁が3枚ずつ付いていることが由来となっています。
エンレイソウの花言葉
木陰にひっそりと美しい花を咲かせる個体も存在するエンレイソウの姿は、奥ゆかしさのある女性のようです。
また、「叡智」という花言葉で純白の花が放つ神々しい雰囲気も表されています。
エンレイソウの特徴
エンレイソウの特徴は以下の通りです。
・エンレイソウの自生地
・エンレイソウの花の特徴
・エンレイソウの葉の特徴
・エンレイソウの実の特徴
花が咲く季節 | 4月、5月 |
実のなる季節 | 9月、10月 |
生活型 | 多年草 |
生活様式 | 地生 |
草丈・樹高 | 200〜400mm |
葉の形 | 単葉(不分裂葉) |
花のつき方 | 単生 |
花の色 | 緑、茶、紫 |
葉の色 | 緑 |
繁殖方法 | 種 |
日照条件 | 日向、半日陰、日陰 |
水分の必要性 | 必要(普通~湿潤) |
土の必要性 | 必要 |
エンレイソウの自生地
エンレイソウは、日本・サハリン・南千島に分布しています。
日本国内では北海道〜九州にかけて分布しており、低地や山林などのやや湿った場所に自生することが多いです。
開花後は木陰で育ちますが、秋になると葉を落として休眠状態となり冬を越します。
エンレイソウの花の特徴
エンレイソウの花は輪生する3枚の葉の中心から伸びた花柄の先に、1輪だけ咲きます。
種によって花弁の有無は異なり、本種のエンレイソウには花弁がありません。
3枚の花弁のように見える部分は萼で、緑色~紫褐色をしています。
エンレイソウの葉の特徴
エンレイソウの葉は茎に3枚輪生しており、葉柄がありません。
丸みのある葉を茎に直接つけている様子はドレスにも見えるため、「森の貴婦人」と呼ばれることもあります。
長さ・幅ともに60mm〜170mm程度で、先端が急に尖っています。
エンレイソウの実の特徴
花が終わると、輪生する葉の中心に実を付けます。
径10mm〜20mm程度の球形で、3つの尖った角があります。
最初は緑色ですが、熟すと黒紫色に染まって食べることができます。
エンレイソウは寿命が長い植物
薬効により人の命を取り留めた逸話が名前の由来となっているエンレイソウですが、エンレイソウ自身も植物にしては寿命が長いことで知られています。
寿命は20年以上と推測されており、1度開花すると毎年のように花を咲かせてくれるため、自宅で栽培したら世代を超えて楽しむこともできます。
ただし寿命が長いぶん、開花までの期間もかなりの年月を要します。
エンレイソウは10年の時を経て花を咲かせる
エンレイソウは1度開花すれば毎年のように花を咲かせますが、種から育てる場合は開花に至るまで約10年の期間を要します。
そのため、自分で育てる場合は根気よく管理を続けながら開花までの時を過ごす必要があります。
しかし長い間管理に苦労した分、花を咲かせることができれば他の植物では味わえない喜びを感じることでしょう。
エンレイソウと似た花

エンレイソウと外見の似た山野草は、複数存在します。
ここでは、エンレイソウに似た種と見分け方について解説いたします。
・エンレイソウとエゾノリュウキンカの違い
・エンレイソウとオオバナノエンレイソウの違い
<比較表>
比較 | エンレイソウ | エゾノリュウキンカ | オオバナノエンレイソウ |
花 | ・葉の中心に1個付く ・緑色~紫褐色の萼片が3枚 | ・集散状に3~8個付く ・鮮黄色の萼片が5枚 | ・葉の中心に1個付く ・白色の花弁が3枚 ・緑色の萼片が3枚 |
葉 | ・長さ、幅ともに60mm〜170mmの卵状菱形 ・先端が急に尖る | ・幅100mm〜300mmの腎円形 ・縁に鋸歯がある ・根出葉は長い葉柄がある | ・長さ、幅ともに60mm〜170mmの卵状菱形 ・先端が急に尖る |
実 | ・径10~20mm ・3稜がある球形の液果 ・緑色~黒紫色になる | 長さ10mm程度の袋果 | ・径10~20mm ・3稜がある球形の液果 ・緑色~黒紫色になる |
草丈 | 200〜400mm | 500mm~800mm | 200〜400mm |
季節 | 4月、5月 | 5~7月 | 4月、5月 |
エンレイソウとエゾノリュウキンカの違い

エンレイソウとエゾノリュウキンカは、どちらも北海道の春を代表する山野草として親しまれています。
両者の決定的な違いは、萼の色です。
花弁がなく緑色〜紫褐色の萼が付いているエンレイソウに対し、エゾノリュウキンカは鮮やかな黄色の萼が目立ちます。
葉は幅100mm〜300mmの腎円形で、縁に尖った鋸歯が規則的に並んでいます。
エンレイソウとオオバナノエンレイソウの違い

エンレイソウの大型種とも言えるオオバナノエンレイソウは、大きな花が特徴的です。
延齢草には花弁がありませんが、オオバナノエンレイソウには白い花びらが3枚付いています。
葉や実に大きな差はないため、花がない時期はエンレイソウと区別することが難しいです。
エンレイソウが見れる場所・植物園
エンレイソウの目撃情報や、生育情報が確認された場所は以下の通りです。
・高館山付近
・野幌森林公園
・東光山付近
・稀府岳付近
・箱根湿生花園
など
エンレイソウの目撃情報
SNS上に寄せられた、エンレイソウの目撃情報をご紹介いたします。
エンレイソウに関するFAQ
エンレイソウについてよくある質問を集めてみました。
・赤い花を咲かせるエンレイソウはありますか?
・エンレイソウに毒性はありますか?
・八重咲きエンレイソウはどこで買えますか?
・エンレイソウは食べることができますか?
・ムラサキの花を咲かせるエンレイソウはありますか?
赤い花を咲かせるエンレイソウはありますか?
赤い花のエンレイソウもありますが、自生種ではなく園芸用に交配された品種です。
エンレイソウに毒性はありますか?
エンレイソウは根や根の根元に「サポニン」という毒が含まれています。
食用とする場合はしっかりと茹でると毒を抜くことができますが、食べ過ぎると嘔吐や下痢などの中毒症状を起こす可能性があります。
八重咲きエンレイソウはどこで買えますか?
八重咲きのエンレイソウは、園芸ショップなどで苗を購入することができます。
エンレイソウは食べることができますか?
エンレイソウは適切に下処理を行えば、葉や茎などを食べることができます。
また、実は柑橘系のような味がして美味しく食べることができるようです。
ただし多量に摂取すると中毒症状が起こる可能性があるため、十分に注意しましょう。
ムラサキの花を咲かせるエンレイソウはありますか?
エンレイソウの変種と言われている「ムラサキエンレイソウ」は、紫色の花びらを付けます。
エンレイソウの育て方
・エンレイソウのガーデニング情報
・エンレイソウの育て方カレンダー
・エンレイソウの栽培方法
エンレイソウのガーデニング情報
先述の通り、エンレイソウは寿命が長いぶん開花までの時間もかかります。
エンレイソウが好む環境を整えながら、地道に管理を続けていきましょう。
栽培難易度 | 難しい |
株間 | – |
種まきの時期 | 6月 |
発芽温度 | – |
生育温度 | – |
耐寒温度 | 30℃ |
耐暑温度 | -15℃ |
エンレイソウの育て方カレンダー
時期 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
開花 | → | → | ||||||||||
植え付け、植え替え | → | → | ||||||||||
肥料(鉢植え) | → | → | → | → | → | → | → | → | → | → | ||
肥料(庭植え) | → | → | → | → | → | → | → | → | → | → | ||
種まき | → |
エンレイソウの栽培方法
環境・土壌
鉢植えの場合、秋〜春頃までは日当たりの良い場所、晩春〜夏頃は日陰に移動させて適度な日当たりと温度を維持しましょう。
土は水はけがよく、有機質の入ったものが適しています。
庭植えの場合は落葉樹の下に植え付け、鉢植え用土を客土にします。
寒冷地では腐葉土もよく混ぜて、20cmほど土を盛り上げたところに植えましょう。
周囲にはシダや同じような環境を好む他の植物も植え、湿度が安定して穏やかな環境になるよう工夫します。
芽出し
実から種を採取する場合、実が熟して柔らかくなったらすぐに回収して苗床にまきましょう。
種を乾燥させると、発芽率が極端に落ちます。
苗床を乾かさないように管理すれば、翌春または翌々春に緑色の糸状の葉が出てきます。
親株と同じ形の葉が出てきたら、鉢や地面に定植しましょう。
芽の先端が地表に飛び出していたら、防寒シートやヤシ殻チップを乗せて寒風から守ってあげましょう。
定植
定植は、8月下旬〜9月下旬が適しています。
肥料
秋から5月までは2ヵ月に1回、三要素等量配合の緩効性肥料を1芽あたり2つまみ与えます。
または、月に1回油カスと骨粉等量配合の固形肥料を2つ置き肥しましょう。
肥料は1〜2ヵ月間、湿らせたものを土に混ぜて発酵させてから使うとより効果を発揮します。
さらに秋〜翌年7月まで週に1回、液体肥料を3000倍に薄めて施します。
芽が出てから4月いっぱいまでは観葉植物用の液体肥料、5〜7月まではリン酸が多く含まれた液体肥料がおすすめです。
手入れ
乾燥には十分に注意して、土の表面が乾いたら水をたっぷりと与えましょう。
鉢植えの場合は砂床に埋めるか、二十鉢にすると乾燥しにくくなります。
また、開花前は強風で柔らかい茎が折れないように支柱を添えましょう。
植替え
鉢植えの場合は2〜3年に1回、8月下旬〜9月上旬に植え替えを行います。
手早く作業し、目の先端が見えないくらいの深さに植えましょう。
庭植えの場合は、植え替えは特に必要ありません。
まとめ
エンレイソウは、その薬効により病気で苦しむ人の命をながらえただけでなく、自信もまた長い年月をかけて生きる山野草です。
様々な品種がありますが、本種のエンレイソウは花弁がなく他の種よりも花が目立ちません。
湿度と栄養を適度に保つ必要があるため栽培は難しいですが、長い間大切に育てた末に開花に成功すれば、他の植物にはない喜びを味わうことができるでしょう。
コメント