黄色く可愛らしい花を咲かせるミヤマキンポウゲ(深山金鳳花)は、高山の草地で大群落をつくります。
シナノキンバイやウマノアシガタなど近似種が多い野草でもありますが、簡単に見分ける方法はあるのでしょうか。
本記事では、ミヤマキンポウゲについて花や葉などの基本情報だけでなく、花言葉やシナノキンバイやウマノアシガタなどの似た花との見分け方についても解説いたします。
記事後半では、ミヤマキンポウゲの育て方についても紹介していますので、最後までご覧ください。
ミヤマキンポウゲとは?
ミヤマキンポウゲとはどんな野草なのか?
ミヤマキンポウゲの基本情報について解説いたします。
・ミヤマキンポウゲの基本情報
・ミヤマキンポウゲの名前の由来
・ミヤマキンポウゲの花言葉
ミヤマキンポウゲの基本情報
学名 | Ranunculus acris var. nipponicus |
英名 | – |
和名 | ミヤマキンポウゲ(深山金鳳花) |
別名・流通名 | ケナシミヤマキンポウゲ(ケナシミヤマキンポウゲ)、コリンキンポウゲ |
科名 | キンポウゲ科 |
属名 | キンポウゲ属 |
原産地 | 日本、朝鮮半島北部、中国東北部、サハリン |
日本での主な生息地 | 北海道~本州中部地方以北 |
ミヤマキンポウゲの名前の由来
ミヤマキンポウゲは、深山(高山)に咲くキンポウゲ科植物であることが名前の由来と言われています。
なお、漢字で「金鳳花」と表記するキンポウゲは、花の姿を金色の鳳に例えたことが由来です。
ミヤマキンポウゲも同様に、鮮やかな黄色の花弁をもつ花を咲かせます。
ミヤマキンポウゲの花言葉
ミヤマキンポウゲの花言葉は、「栄誉」「子供らしさ」「無邪気」などの花言葉があります。
ミヤマキンポウゲの花は光沢を帯びた黄色をしており、金メダルを思わせる外見をしているため「栄誉」という花言葉が付いたのではないでしょうか。
また、小さく可愛らしい花の姿を「子供らしさ」や「無邪気」という花言葉で表していると思われます。
ミヤマキンポウゲの特徴
ミヤマキンポウゲの特徴は以下の通りです。
・ミヤマキンポウゲの自生地
・ミヤマキンポウゲの花の特徴
・ミヤマキンポウゲの葉の特徴
花が咲く季節 | 6~8月 |
実のなる季節 | – |
生活型 | 多年草 |
生活様式 | 地生 |
草丈・樹高 | 120〜700mm |
葉の形 | 分裂葉 |
花のつき方 | 単生、集散花序 |
花の色 | 黄 |
葉の色 | 緑 |
繁殖方法 | 種、株分け |
日照条件 | 日向 |
水分の必要性 | 必要 |
土の必要性 | 必要 |
ミヤマキンポウゲの自生地
ミヤマキンポウゲは日本・朝鮮半島北部・中国東北部・サハリンを原産地としており、日本では北海道~中部地方以北に分布しています。
亜高山帯~高山帯の湿り気がある場所を好み、雪渓周辺に大群落をつくることが多いです。
近年は秋田県でレッドリストの絶滅危惧種Ⅱ類と指定されている他、南アルプスの仙丈ケ岳では鹿の食害を受けて減少傾向にあります。
ミヤマキンポウゲの花の特徴
ミヤマキンポウゲの花は茎先に2~4個が集散状に付くか、単生します。
花は径15~25mm程度の大きさで、鮮やかな黄色をした5~6弁花です。
花弁に金属質の光沢があることが特徴です。
ミヤマキンポウゲの葉の特徴
葉は根出葉と茎に互生する茎葉の2種類があります。
根出葉は長さ10~60mm・幅15~80mmの大きさで掌状に3裂しています。
また、裂片がさらに裂けており基部は浅い心形~深い心形です。
葉の両面には毛が生えている他、根出葉の葉柄にも毛があります。
ミヤマキンポウゲと似た花

ミヤマキンポウゲには近似種が複数あり、見分けが難しく思うほどよく似ています。
ここでは、ミヤマキンポウゲと似た花の種類と見分け方について解説いたします。
・ミヤマキンポウゲとシナノキンバイの違い
・ミヤマキンポウゲとウマノアシガタの違い
・ミヤマキンポウゲとキツネノボタンの違い
<比較表>
比較 | ミヤマキンポウゲ | シナノキンバイ | ウマノアシガタ | キツネノボタン |
花 | ・黄色 ・5~6弁花 ・皿形 ・光沢を帯びる ・径15~25mm | ・黄色 ・5~7個の萼片が目立つ ・皿形 ・径25~45mm | ・黄色 ・5弁花 ・平らに開く ・光沢を帯びる ・径15~20mm | ・黄色 ・5弁花 ・平らに開く ・花弁は長さ4~6mm |
葉 | ・根出葉と茎葉 ・根出葉は掌状に3裂する ・裂片がさらに裂ける ・両面に毛がある | ・根出葉と茎葉 ・根出葉は掌状に3全裂した円形 ・裂片は羽状に裂け、各片が細長い | ・根出葉と茎葉 ・根出葉は掌状に3裂する ・両面に毛がある | ・根出葉と茎葉 ・根出葉は掌状に3裂する ・裂片は浅い切れ込みと縁に鋸歯がある ・両面に毛がまばらに生える |
草丈 | 120〜700mm | 40〜800mm | 300〜1200mm | 200〜700mm |
季節 | 6~8月 | 7~9月 | 3~6月 | 4~10月 |
ミヤマキンポウゲとシナノキンバイの違い

シナノキンバイはミヤマキンポウゲと同じく高山帯のやや湿った草原に自生していますが、分類はキンバイソウ属です。
生育環境によってはミヤマキンポウゲよりも草丈が低くなることがありますが、花はやや大ぶりで目立ちます。
なお、花弁に見える部分は萼片で5~7個付いています。
他にも、葉の裂片はミヤマキンポウゲよりも細長いという違いがあります。
ミヤマキンポウゲとウマノアシガタの違い

キンポウゲとも呼ばれているウマノアシガタは、日当たりの良い草地に自生するキンポウゲ属の野草です。
花はミヤマキンポウゲと同じく光沢のある黄色い5弁花ですが、平らに開くことが分かりやすい違いです。
ミヤマキンポウゲとキツネノボタンの違い

水田に自生することが多い、キンポウゲ属の野草です。
花は黄色い5弁花で、花弁はわずか4~6mm程度の長さしかないためミヤマキンポウゲよりもはるかに小ぶりな花となります。
茎葉は3全裂しており、根出葉は3出複葉で1~3個付きます。
裂片の切れ込みが浅く、縁に鋸歯があります。
ミヤマキンポウゲが見れる場所・植物園
ミヤマキンポウゲの目撃情報や、生育情報が確認された場所は以下の通りです。
・白馬大雪渓
・緑岳
・八甲田山
・栂池自然園
など
ミヤマキンポウゲの目撃情報
SNS上に寄せられた、ミヤマキンポウゲの目撃情報をご紹介いたします。
ミヤマキンポウゲに関するFAQ
ミヤマキンポウゲについてよくある質問を集めてみました。
・キンポウゲ科のほとんどの植物に毒があると聞きますが、ミヤマキンポウゲにも毒はありますか?
・ミヤマキンポウゲとシナノキンバイの簡単な見分け方はありますか?
キンポウゲ科のほとんどの植物に毒があると聞きますが、ミヤマキンポウゲにも毒はありますか?
ミヤマキンポウゲも全草に毒性があるため、決して食べないよう注意が必要です。
ミヤマキンポウゲとシナノキンバイの簡単な見分け方はありますか?
ミヤマキンポウゲは細長く花が小ぶりなのに対し、シナノキンバイは大ぶりで目立つ花を咲かせることを覚えておくと見分けやすいです。
ミヤマキンポウゲの育て方
・ミヤマキンポウゲのガーデニング情報
・ミヤマキンポウゲの育て方カレンダー
・ミヤマキンポウゲの栽培方法
ミヤマキンポウゲのガーデニング情報
ミヤマキンポウゲは高山植物の中でも比較的育てやすく、見た目の可愛らしさも相まって園芸植物としての人気も高いです。
ただし高温多湿に弱いため、適切な環境を用意することが大切です。
栽培難易度 | やや難しい |
株間 | – |
種まきの時期 | 2~3月 |
発芽温度 | – |
生育温度 | – |
耐寒温度 | – |
耐暑温度 | – |
ミヤマキンポウゲの育て方カレンダー
時期 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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開花 | → | → | → | |||||||||
植え付け、植え替え | → | → | → | → | ||||||||
肥料(鉢植え) | → | → | → | → | → | → | ||||||
肥料(庭植え) | → | → | → | → | → | → | ||||||
種まき | → | → |
ミヤマキンポウゲの栽培方法
環境・土壌
鉢植えの場合は1年中日が当たり風通しの良い棚上が良いですが、梅雨の時期は雨を避けて管理しましょう。
庭植えの場合はロックガーデンが適しており、正常に育てば根茎で増殖するためスペースに余裕を持たせておくことをおすすめします。
用土は鹿沼土・日光砂・軽石砂(2~5mm目)を5:4:1の割合で配合するか、市販の山野草培養土を使います。
水はけと水もちの良い用土を使うようにしましょう。
芽出し
種は花が終わった後の実から自然に落ちてくるため、培養土にまきましょう。
翌年には発芽し、その後1~2年で開花します。
定植
鉢植えの場合は風通しと水はけの良さを考えて、焼き締めのものを選びましょう。
盛んに増えるため、口径が広い鉢をおすすめします。
定植の際は複雑に絡んだ根茎を傷つけないよう注意し、用土を落として根を広げるようにして位置を決めてから植えこみます。
定植後は脱水しやすいため、1週間はたっぷりと水やりをしましょう。
肥料
4月下旬~6月下旬、9月下旬~11月上旬にかけて液体肥料を施す他、春と秋に1回ずつ置き肥を併用しましょう。
手入れ
水やりは毎日1回行いましょう。
春・秋・冬は朝に、夏は夕方以降が最適なタイミングです。
芽出しから開花まではアブラムシやナメクジ、ヨトウムシの食害に遭いやすいため注意が必要です。
また、用土が痛むとヤスデやダンゴムシの巣になります。
植替え
植え替えは毎年または2年に1回の頻度で行います。
ただし、用土や株が傷んでいるようであれば時期を問わず早めに植え替えましょう。
その他、キンポウゲ科の花一覧
キンポウゲ科の花は約60種
ミヤマキンポウゲの他にも、キンポウゲ科に分類される花は62属2500種が存在すると言われています。
東アジアの温帯を中心に世界中で広く分布しており、種によって異なる美しい花を咲かせることで有名です。
ただしどの種も毒性があり、摂取すると嘔吐や下痢などの症状だけでなく最悪の場合死に至る可能性があるため注意が必要です。
ここでは、キンポウゲ科に分類される有名な花をご紹介いたします。
キンポウゲ

キンポウゲは、ウマノアシガタが園芸用に品種改良された花のことです。
ミヤマキンポウゲやウマノアシガタと同じく光沢がある黄色の花が特徴的ですが、八重咲きでより華やかな見た目となっています。
ラナンキュラス

「ハナキンポウゲ(花金鳳花)」という和名がついた、彩り鮮やかな花が特徴的な種です。
八重大輪でこんもりと開いた花びらが美しく、春の花の中でも特に高い人気を誇ります。
アネモネ

鮮やかな花弁状の萼片と、柱頭が黒い雄しべの密集した中心部でツートンカラーとなった花が特徴的な種です。
萼片は赤・青・ピンク・白色の他、2色に染まることもあります。
クリスマスローズ

冬に花期が訪れ、バラのような花を咲かせることからその名前が付いたキンポウゲ科の花です。
園芸種として人気な他の花よりも控えめな印象ですが、主張しない落ち着いた白色で清楚なイメージを持たせます。
クレマチス

ツル性の観賞用植物として人気が高く、「ツル性植物の女王」とも呼ばれる種です。
花弁状に発達した萼片は種によって様々な色・形があります。
日本や中国では大輪のクレマチスを鉢に仕立てますが、ヨーロッパでは花が小さな種が多く、アーチに絡めたり壁面を這わせて彩るような仕立てが主流です。
まとめ
ミヤマキンポウゲは、高山帯で群落をつくるキンポウゲ科植物です。
独特の光沢がある花が美しく、花期になると登山道を黄色く彩ります。
環境や虫害対策の管理が重要ですが、高山植物の中では比較的育てやすいため苗を購入の上栽培に挑戦してみても良いでしょう。
ただし他のキンポウゲ科植物と同様、全草に毒性があるため注意が必要です。
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